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行き止まりは、どこにもなかった

行き止まりは、どこにもなかった

新!コテ派な日々~第二十四話~(番外?Dead Data@第最終話)

ヒュゥウウウ…。


触手の猛攻で、ビルはその周りの壁をすべて失っていた。

その為に吹き込んで来る風が少々鬱陶しい。火の能力者にとっては追い風なんだろうが

それ以外に取っては向かい風でしかない。


「チィッ、あと何匹居る?」


苛立った様子であるコテが適当にそこらのコテに尋ねる。

だが、そちらでもまた、無数の…黒い塔から切り離された触手の群れがうねり、鳴き声を上げていた。


「分かんない…数えられる数じゃないし…。」


ふぅ、と溜息を付いてそのコテは当たりを見渡す。

この街の住人総出でやってきた訳だが、そのうちの半数は非戦闘員の子供や女。

もしくはコテの形でなく、人型の精神体であった為、気づけばごっそり減っている。

恐らくは逃げ出したのだろうが…もし、やられていたら…。


「人型は逃げられただろうかな…。連絡取りようがないから不安だが…」


コテに比べて、人型の精神体は脆い。見た目通り通常の人間だからだ。

その上、身体能力的にも動物の見た目を持つコテよりも圧倒的に弱いのだ。

それだけに、姿が見えないと不安になるらしく、そのコテは頻りに周りを気にしていた。


「無事…だよね?無事だと、いいな…」「だな」


返事を返した女性コテ。戦闘型だったから共に戦っているが、彼女も動揺の不安を感じていたらしい。

ふと、二人の視線がこの触手達の根本、黒い塔の方へ向く。

そこでは、ロドクのコテの中でも尤もロドクに近いコテ達…死忘やかてないさかな、

糊塗霧や閃光騨にヤキムシ、siwasugutikakuniが戦っている。だが、その状況も良さそうには思えない。

徐々に疲弊し、弱っていってるのが目に見えて分かる。このままではいずれ全滅だ。


「…早いとこ、ロドクの馬鹿野郎をぶん殴って連れ戻せよ…。よく知らねーコテ…」


上空を見て、ぽろりと零すコテ。その眼前には再び、触手の攻撃が迫っていた。

限界は近い。時間の問題だ。果たして…。












「全然上見えてこないぃー!!」

「マジでやべーなオイ、たっけーよオイ…」

「怖い?」

「いいから早くいけよぉ!!」


俺とユキはぐんぐん上を目指して飛んでいる。

が、相当高く飛んでとうとうビルが見えなくなってもまだこの塔の本体らしい物は見えない。

まさか、俺の読みは外れだったのか?ただ長いだけ?いや、そう思うのは流石にはえーか…。

しっかしたけーよ!下見たら何も見えない位の高さってすげぇ怖い!落ちたら一発で死ぬぞこれ!

折角これまで死なずに来てんだ、命大事にしたいよ俺は!


「あっ!あれ!!」


突如ユキが声をあげる。そして何かを指差した。

おっと、やっとおでましか?

雲を超え、塔の天辺と思われる平たい台座の様な物が目に入る。

そこを目指し更に高く飛んで、近づいていくと…居た。ロドクだ。

しかし、その姿は今までの様などす黒かったり歪だったりする何かを抱えた様子には見えない。

ただ、嫌な事があって泣いてる小さな子供の様な。そんな雰囲気だった。

台座は辛うじて2畳程の広さ。そこに二人で降りるが、膝を抱え、顔を隠して泣いているロドクは何も反応しなかった。


「…オイ」


声を掛ける。

ロドクは動かない。

が、小さく蚊の無く様な声で何か呟いた。


「俺は、間違ったんだ…」


それは、彼の懺悔だった。


「気付いてた。俺は一人ぼっち、俺は誰にも勝てない。
  でも、だから自分が決めた事だけはやり通して自分には負けたくなかったんだ」

「だから、どんなに間違っていても、後戻りするつもりは無かった…けど、もう、何も出来ない…俺の負けだ…」

「俺にはもう何も無い、何も残ってないんだ…」



その文言はどこかで聞いた事がある。

そう思って自分の記憶を辿って、やっと気付いた。

そうか、あの時見た夢だ。あれは、ロドクの本音そのものだったのか。

コイツは気付いてた。自分のしてる事、自分の間違い。

だけども、気づけばそれは自分自身とは別物の化物になって、結局コイツ自身を飲み込んだ。

これまで戦っていたロドクは今目の前に居るロドクとは別だろう。

そして、それの正体こそ、コイツの足元にいるこの黒い塔。

幾つも積み重ねてきたコイツ自身の負の感情の塊。

俺達との戦闘でゆるんだそいつを切り離して、こうして分離する事が出来た。

だけど、残ったのは強い後悔。それ故にロドクはこの天辺に隠れる様に居る。


「…負けてないよ」

「…ユキ?」


思いがけず、ユキがロドクの言葉を否定する。

本人も、考えるより先に口が出た、と言った感じで驚いていたが、何か決めた様に頷いて、言葉を続ける。


「君が見ている部分は勝ち負けだけで考えられる物なんかじゃない。
  競うだけの部分じゃないよ。だから、君は負けてなんかない。同じ場所で勝負した訳じゃないもの」

「君には、君に出来る戦いがある。それで勝てるまでやればいい。負けたら終わりなんて事は絶対ない!」


スッとロドクが顔を上げる。

その表情はまた、今にも泣き出しそうながら、驚いた顔をしているようだった。


「終わりじゃ、ない…?」


ユキの言葉を確かめる様に繰り返す。

それに、俺も同意する形で答えてやった。


「そこで終わる事こそ俺にとっちゃ負けだよ!まだ何もやってねーのに負けたかないだろ」


パァンッ!!!


ロドクの表情が変わる。目に光が灯ったかと思った瞬間、黒い塔が弾けた。

…こんな単純な事だったんだ。

コイツは、本当は迷ってた。どうすべきなのか。誰も教えてくれない事で。

だからこそ、自分で決め、自分で突っ切りやって来た。その上で間違って、それにも気付いて居たが

他に道を示す人間も居なければ、自分が作った道を棄てる覚悟も作れなかった。

だから、教えてほしかっただけなんだろう。

どう棄てるのか、どう、道を見つけるのか。

今の一言で、その疑問は十分に晴れたらしい。全く、手間掛けた割には単純な野郎だ。

って


「うぉっとと!!」


元の姿に戻ったロドクが、黒い塔が消えた事で落下していく。

このままだと地面に叩き付けられちまう!って事で慌ててユキに頼み、追い掛け、捕まえた。

意識がないからスゲー重たい。


「だ、大丈夫かぁ!ユキぃ!」

「ぎ、ギリぃ…で、でもこれ以上はやばいからすぐ降りようねぇ…」

「お、おーう…」



そう言ってゆっくりと羽ばたきながら下降していく。

長かったようで短かった。記憶を探して、街を守って…。

そんな俺の冒険は、やっとこさ終わりを迎えられそうだな…


「終わり?終わってなど、居ませんよ…。これからが私の本領ですからねぇ!!!」



不穏な言葉と共に、かてないさかなが現れ、切りかかってくる。

その背中には黒い翼。両手の太刀も、本人も元の色よりずっと黒く、禍々しさを感じる物に変わっていた。


「おま…何で急に!?さっきまで一緒に戦って…」

「あぁ、“バックアップ”とやらで生まれた方の私の件ですかぁ?!
     あいつなら今も変わらず下で遊んでるんじゃぁないですかねぇ!?」

「あんな腑抜けと一緒にしないで頂きたいですねぇ!!デェエエッド、、デェエタァアアアア!!!」


…!!バックアップにその記憶は無い筈だ。

って事はコイツは、ウィルスに侵された、ロドクが生み出した方のかてないさかな!?

そいつは俺が一撃で燃やし尽くした筈だ!何故生きている!?そもそもそれならロドクへのウィルス特効薬は…!


「色々お悩みが多い様子ですねぇ。けど、それは全く無関係ですから、あんま気にせずとも平気ですよぉ?」

「私はねぇ!!最早ヤツから独立したコテで、無関係なコテなんですよ!!」


ぶわぁっ、とかてないさかなの身体が細かな紅い粒子に変わり、飛び散る。

そして、それが激しく俺たちの周りを飛び交い、攻撃してきた。


「うぁっ…!く、うぅ!」

「ユキ!!くそ、てめぇえ!!」


小さな紅い粒子、ウィルスの姿となったかてないさかな。

その一つ一つからかてないさかなの声で語りかけてくる。



「ロドクはウィルスを持っただけで満足した様ですが
  私はウィルスの持つ無限の可能性、それの追求を独自にしてきました。」

「幸いにも、調べるのに最適なパソコンがあったのでね、ちょくちょくお借りしながら細かに解析していたのです」

「感謝してますよぉ、心金柑さんには…!あれだけのスペックのパソコン、私には用意できませんからぁあ!」


ブンブンと飛び交う虫から聞こえてくるかてないさかなの声が幾つも重なって聞こえてくるのが頭に響く…!

正直それだけでも結構ダメージありそうな位だ。なんなんだこいつ、なんなんだこれ!!


「お陰で私はウィルスで構成されたこの身体を自分なりに組み直し、ロドクの支配から逃れました!!」

「更に、ウィルス一つ一つ全てを私そのものに書き換え、
    1つでも残ればそこから再生を可能とする所まで完成させたのです!!」

「ふふ、アナタの銃凄いですね、99%が燃え尽きましたよ…
          でも、残り!!1%がぁ!のこってましたからぁああ!!!」

「ウィルス体の状態ならどうやら来場者数のカウントからも外れる!死の偽装は簡単でした!後は、邪魔なロドクを…」

「私がわざと泳がせ!!強化させたあなた方がに倒して貰い!!ロドクが弱った隙にぃ!!
        新たな力を得て現状最強となった私がそっくりそのまま世界をすーべて乗っ取る!!
           それが計画なんですうl!!あはっ、あはははは!!あはははははあはははあ!!」


…全て、コイツの手のひらの上だった、そういう事か…!

狂った様に笑うかてないさかなに俺は怒りを燃やすが、それ以上に戦慄していた。

だとしたら、ロドクは確かにウィルス特効薬が効いてその力を失っている。

その上、今は手負いで弱っている。となると、

ウィルスを持つかてないさかなはこの世界を作ったロドクより確かに上だ。

ウィルスは、改変の能力を持つ。ロドクはそれと世界を創る力両方があったから他が手出し出来なかった。

だが、片方となった上、動けない今…。同等、もしくは不利な状況へと力関係は変わってしまっている事になる。


「さーあぁ、最終戦、やっていきましょぉかぁあ!?げき、げき、げきさぁあああん!!!!」

「く…。」


俺の力は恐らくロドクやコイツと同等ではあると思う。ロドクから分けられた物がでかいからな。

だが俺はユキに掴まって片手しか使えない状況。

その上ユキもロドクを抱えていてあまり自由には動けない。

この状態であそこまで力を持ったかてないさかなを相手するのは些か無理がある。

しかし逃げようにも恐らく奴がそれを許さない。まずい…。


   ジュカイ
「…“樹海”」

「ん、んんーー?」


シュルリ、と蔦の様な物が伸び、かてないさかなを縛り付ける。

…今の技は、確か…ロドクがさっきまで使ってた…?しかし全然見た目が違う…。


「…色々と世話になったな、お前ら。」


そう言ってロドクはその手から蔦を伸ばし、かてないさかなを縛り付けている。

ってことは…あれはやはり、ウィルスが無い状態のロドクの技なのか…。


「これ以上は、流石に貰い過ぎて俺も返せる自信無ぇからさ。まー…その、あれだ。今まで有難う。」


そう言うとロドクは蔦を引き、更にかてないさかなをきつく締め上げる。

だが、その蔦がギシギシと音をたて、少しずつ開いていくのが見えた。



「く、くくく…!この程度で私をどうこう出来るとでも…?今の私はアナタよりずっと上だ、ロドク…!」

「んー…まぁ、思ってねぇよ。これでどうにかなるとは。けどさ」


ドゴッ!!


「んぐ!!?」

「何を!?」


突如ロドクはロドクを抱えていたユキと、俺を蹴飛ばし、空中へと跳んだ。

今ので体勢を崩し、俺はうっかりユキの足を離してしまい、落下していく。


「あっ!ゲキィイイーー!!」

「うぉおおお!!!?」


ユキは一瞬迷ったが、すぐに俺を助けようと下降してくる。


「待て、待てユキぃ!!ロドクを放っていくな!!アイツは…!!」

「それでも今はゲキくん助けないとゲキくんが死んじゃうでしょ!?」

「お前、分かって…!!ダメだ!!すぐロドクを…」













「ふ、ふふ…どうするおつもりですか、お仲間を逃してぇ…私、アナタを殺してそれで終わりとかしませんよぉ?」


自分を縛る蔦にぶら下がるロドクを見下ろしながら、かてないさかなはにたにたと嫌らしい笑みを浮かべる。

だが、ロドクはそんなかてないさかなには返事をせず、淡々と何かを呟いている。


「強制コード行使、チートモード以降…。住民データダウンロード、能力の使用を実行…」

「なっ、なんだ!?何をしようとしている…お前ぇ!!!」

「お前、俺の管理下から外れてるよな。けども、それまた管理下に戻せば良い訳だろ?」


そう言うとロドクは蔦をよじ登り、かてないさかなの肩へと登る。

それと同時に空間にパソコンの画面と同じ様な物が浮かび、二人を取り囲んだ。


「これは…!?」

「心金柑が使ってたPCと同じ位のスペックのもん。なんもない空間にコピペして無理矢理動かしてる。」

「まぁ俺だと扱えないんだけど。そこはほれ、一応管理人だからな。
         管理用コードで心の能力を俺に移して使わせて貰ってる」

「“塔”は一応俺の一部だったから…聞こえてたんだけど。
   “同期”ってやって、コテ二人を1つにくっつけられるみたいだよな。」

「は…!?」


ロドクはそれだけ言うとパソコンを操作し、全て同じ画面に移動。

そしてプログラムを起動した。



「ぐぁぁあああぁああぁああっ!!?」


激痛と頭を直接かき混ぜられる様な感覚がかてないさかなを襲い、思わず叫び声を上げる。

ロドクにも同じ感覚が流れている筈だが、彼は全く微動だにしない。


「同期…だと…!!それは、同じコテ同士だからこそ出来る事…でしょうがぁ…!!こんな、別コテ同士…
 それも、一度支配から逃れた私と、あなた等…!!!そう簡単に同期出来る筈がないぃ…!!失敗する可能性だって高い…!!」

「お互い死ぬぞ・・・!!分かっているのか…!!こんな、馬鹿な事…やめろぉおぉお…!!!」



「わかってるさ。」



ロドクはあっさりと答え、何事も無いかの様に笑う。


「けど、やる価値ある位には色々して貰ったからな。俺はこれで、“勝ちたい”んだ」


バチバチと鳴り響く火花を散らす様な音。

激しく溢れるかてないさかなの断末魔。

それら全てが長い間続き、ロドクの“初めての戦い”は非常に苦戦している様だった。

しかし、突如としてそれらがふっと消え、ロドクの姿も消えた。

同期…二人の融合は完了した。

と、同時に…その場に残っていたかてないさかなはゆっくりと口を開く。


「ふ、ふふ…」

「はは…。はははは…」

「アハハハハハハハハハハハハ!!!馬鹿め!!消えたのは奴だけだ!同期は失敗した!!」

「それどころかこれは下手すると私に管理権まで移ったのではないですか!?あぁ、全く犬死だ!傑作ですよ本当!!」


そう言いながら、かてないさかなは右手で先程空中に出現していたパソコンの操作を進める。


「はははははは…は?な、何…を?」

「何をしているんです私は!!何故、何故管理権を使ってパソコンの操作を…」

「私の削除を行おうとしているんです!!?」


何とか止めようとかてないさかなは足掻いているが、右手は頑として止まろうとしない。

押さえつけようとも離れようとしても全く言うことを聞かない。

そして、ついにその画面が開かれる。あとはもう、エンターボタンを押すだけで彼の削除は終わってしまうのだ。


「やめっ、やめろぉ…!!こんな所で、私は終わりたくはない…!!
 ここまで計画を練って、上手く行っていたんだ…それが今更何故、何故こんな無茶苦茶な方法で…!!」


突如、右手が止まり、メモ帳を開き出す。

そして、キーボードを叩く様な動作をすると、そのメモ帳に文章が打ち込まれた。

それは恐らく、ロドクの言葉だった。



『正義は必ず勝つ、悪は必ず討たれるそうだぜ?』


「クソがぁあああああああああ!!!!」



タンッ!!




シュゥンッ…。














エンターキーが叩かれ、かてないさかなが消滅する。

空中に浮かんでいたパソコン画面も同じようにその場から消え去った。

そこへ、激撃激とユキが慌てて飛んできた。

だが、そこに誰も居ないのを見て、不思議な顔をする。

二人はそのまま少しの間、何かを探して空中をぐるぐると回っていたが

やがて、急に“自分たちは何をしているのだろう?”と言った不思議そうな表情をした後、地上へと戻っていった。

その背後に、小さくパソコンの画面が浮かんでいるのには気づかず、去っていった様だ。

パソコンの画面には更に小さく、“他のコテからもロドクに関する記憶の情報を削除しますか?”と表示されて居たが

OKボタンがクリックされ、そのままパソコン画面が閉じた。

その後には、空中にはもう、何も表示される事はなかった…。












コテキャラの世界。

それは夢に溢れ、とても楽しい世界であろう。

自分の分身であるコテに自分以上の能力を授け、

想像上の世界の中で無敵となり主人公となって楽しむ。

それはよくある事。それは、人々の夢。

それを誰も咎めはしない。

とは言え、自身にとって大きな黒歴史になる事は間違いない訳だが…。

個人で楽しんでる段階であれば危険も無ければ迷惑も掛けない。



ただ、それが…。

その夢が”大き過ぎた”時…

それは自分だけじゃない、相手や世界にまで大きな影響や被害を及ぼす災害に成り得る。

そうなってくると、もう、それは個人の楽しみで看過出来るレベルではなくなる。

…そうした事件でさえも、この世界は受け入れ、全ては正常として回っていく。


だから、悩む必要はない。頼れる仲間たちが来るのを待とう。

そして、再び夢を続けるのだ。

その、架空の世界ながら、それぞれのコテ達が愉快に騒ぎ、活き活きと生き続ける世界を!












激撃激「いやー、マジでやっべぇ戦いだったわぁ、あの時は」

ユキ「だねぇ。最後は敵の自爆で終わっちゃったから消化不良だけどもね。」

糊塗霧「まぁ、終わったなら問題ないだろう。今の平和を存分に謳歌しようではないか、な?」

ユキ「だーねぇ。いこっか、閃ちゃん。」

閃光騨「はーい!きょうはどこいくのー?」

激撃激「予定はピクニーック!ただ突如俺との剣道が始まる可能性無きにしも非ずー」

閃光騨「えぇー、イヤ!!ゲキマジでなぐるからぜったいイヤ!」

激撃激「はっはっは、勝って見給えよー。そしたら俺ももーっと修行してくるし」

閃光騨「けっきょくそれ、またたたかうんじゃーん!!いやだってばー!!」

激撃激「はっはっはっー」

ユキ「相変わらずだなぁ、ゲキくんは…。」

「…。」

ユキ「うん?あ、ちょっとまって皆。あそこ、新入りっぽい人居るよ」

激撃激「ん?おーおーおー!!マジかぁ!久々じゃねーかー!…って、お前なんだ、真っ白いコテだな…」

激撃激「顔もなんもねーし特徴もねーな…。何か武器は?何も持ってねーの?」

「…無いな」

激撃激「マジか。え、名前は?」

「…それが、記憶が無いんだ」

激撃激「マジか。ってすると適当に付けるか、えーとー…そうだなぁ…どうつけるかぁ」

「…記憶が戻ったらきっと名前はあると思うぞ。だから、そうだな…今は便宜上の名前にしといてくれ」

「戻ったら、ちゃんとその時改めて名乗るから、な。」

激撃激「おー、そうか?んじゃぁ、便宜上の名前って奴にしとくけどもー…えーと、どっちみちどうするんだ、その名前」

「“Dead Data”…って呼んでくれ」

激撃激「…何かスゲー懐かしい名前だわ。」ユキ「…前は私達がそれだったもんねー。」

激撃激「そだっけ?」ユキ「えぇぇ、忘れちゃったの?」激撃激「いや、ウソウソ。覚えてる!覚えてるって!」

激撃激「まー、だとするとアレだな、結構記憶戻るまでは大変だろうけど、よろしくな。」

「おう、よろしく。」

激撃激「とりあえず、こいつも混ぜて行くか、ピクニック。」

ユキ「だね」

閃光騨「ほか、だれかくるー?」

激撃激「予定はコトと、ヤキと、シワと、バカップル」糊塗霧「…待て、私その予定知らんぞ。この後用事が…」

激撃激「うっせぇー!強制じゃーい!」糊塗霧「馬鹿な…人権は大事だぞ!!」激撃激「コテにねぇよそんなもーん」

ワーワーワー

「…。」

ユキ「えーっと、ああいうの苦手だったり?大丈夫?」

「ん?あぁ、いやいや。そういう事はねーよ。寧ろいいな、って思ってる。」

「次こそは俺も、ちゃんと混ざろう、って」

ユキ「…え?」

「改めて、よろしくな。お前ら。」

ユキ「う、うん…」

「よろしく、街ー!!!」



夢はきっと、終わらない。

新たに夢を作り、繋いでいく。たまの悪夢もスパイスに変えて、より良い夢を、醒めない夢を!!





おしまい。


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